髪に潤いを与えたい!守りたい!と思う方、多いのではないでしょうか?
化粧品には、洗浄系だろうと、化粧系だろうと目的がなんであれ、とにかく潤いありきのアイテムが多いですよね?
でも、「潤い」とは何でしょうか?
私たちは、水で顔や髪を洗うくらいでは、肌や毛髪に潤いを与えた!とは当然思えませんよね?では、どうすれば潤いを与えた!と考えるでしょうか?多くの方が、栄養のある水分の浸透を想像するのではないでしょうか?
でも実は、毛髪や肌は刺激物の侵入を拒む幾重かのシールドを備えており、どんな有効な成分でも、簡単に浸透を許しません。それでも浸透させたければ、シールドを壊す必要があります。
シールドを壊すことは、潤いを与えるどころか、本末転倒も良いところで、人体的には、百害あって一利無しと言えます。それでも、多くのコスメが、有効成分の浸透による潤いをアピールするのは、どういうことなのでしょうか?
確かに、理想の仕上がりと『潤い』は切っても切れないつながりを持っています。
なぜなら、お肌や毛髪といった私たちの表側を守る細胞達は、水と油の上手な配置によって、ハリやコシといった美しさに加え、刺激の侵入を防ぐと言ったシールドまでも形成しているからです。
ここで、注目なのが、水だけではなく油も重要と言う事です。
今回は髪について、なぜ、潤いが大切なのか?潤いを与える、守るとはどういうことなのか、考えてみたいと思います。
※頭皮(お肌)の潤いについては、こちらで紹介いたします。
Contents
髪が潤うとはどういうことなの?タンパク質にある潤いの仕組み
髪はタンパク質で出来ています。正確には、ケラチンと呼ばれる数種類のアミノ酸から構成されているのですが、その構成によって例えば、水に馴染む馴染まないといった特徴が変わってきます。
髪はこれらの特徴の違いを上手に構成して出来ています。これにより『タンパク質』と『水分』という本来構成しずらい両者を、上手に共存させて髪の『潤い』を実現しているのです。
つまり、髪の『潤い』が失われるとは、単に髪の乾燥による水分不足を言うのではなく、タンパク質の欠如(ダメージ)に伴う、水分量の低下を言うのです。
この水分欠如は、単に水分を髪内部へ浸透、ましてや塗布すれば解決する物ではないことは明らかですよね?もう少し、髪の水分保持の仕組みを掘り下げていきましょう。
水分保持の主役、CMCとは
髪の構成は、絵のようになっています。
一番外側がキューティクルと呼ばれる髪内部を守るウロコのような物です。その中にタンパク質がぎっしり詰まっているところがコルテックスと呼ばれる部分です。
そして、キューティクル達とコルテックス達との間を埋めている物質がCMC(細胞膜複合体)と呼ばれる脂質系の成分達です。「セラミド」「オレイン酸」などが有名ですね。これらの脂質系成分達は、さまざま、役割があります。
おおまかに役割を並べると、
1つ目は、水分の保持によるバリア機能の形成です。水層と脂質系成分の層を交互に形成することで、油性の刺激は水分が遮断、水性の刺激は脂質系成分が遮断することによってあらゆる刺激の侵入を阻止します。
2つ目は、髪に蓄えられた水分とセラミドたち脂質系成分は、外部からの摩擦などの物理的刺激を柔軟に守ることができます。またこの物理的シールドこそ、髪の柔軟性、つまりは、コシやハリの正体なのです。
3つ目は、キューティクルやコルテックスなどの髪の主成分同士をつなぎ合わせる接着剤の役割です。
接着剤であるCMCが不足すると、キューティクルがめくれるようにして外側にひらきます。
こうなってしまうと、残り少ない内部のCMCも流出し、コルテックス達までの通り道が完成してしまいます。
すると、容易に侵入して来たさまざまな外部刺激達により、髪内部にもさまざまなトラブルを生んでしまい、髪はどんどんスカスカの状態になっていきます。スカスカの髪は柔軟性を失い、チリチリごわごわのダメージ髪になるばかりか、『ツヤ』も失います。
なぜならば、『ツヤ』の正体とは、髪による屈託のない光の反射だからです。この光の反射は、みっちりと充実した髪内部によって初めて実現できるのです。
このように、CMCこそ潤いの源といえます。
そして、潤いとは、このCMCによる保水機能によって生み出される柔軟性による『ハリ』と『コシ』、充実した髪内部が生み出す光の反射『ツヤ』と言うべきなのです。
決して、膨潤した髪のことでも、水分にとんだだけの髪を言う訳でもないのです。
なぜ、潤いは失われるのか?CMCの減少の原因
髪は生まれた時がベストの状態で、時間とともに潤い(CMC)を失っていきます。
ですから、ほとんどの方は、毛の先にいく程潤いを失っていて、状態が悪いのがあたりまえなのです。これは、私たちの髪にダメージ回復する力はおろか、ダメージを感知する力すらも無いことが原因です。
ですから、私たちの髪は気づかないうちにダメージを受け、けっして回復することは無く損傷を蓄積していきます。ですが、逆に言えば、生まれたての髪のCMCさえ維持出来れば、最高の潤いをもった髪が手に入るとも言えます。
では、CMCの損傷がどうして起きるのかというと、パーマ液による酸化還元や、アルカリ系成分による溶解などが上げられます。石けんで髪を洗うとギシギシに仕上がるのは、石けんがアルカリかつ、強力な洗浄成分を持っているためです。とはいえ、これらは避けられるものですね。
避け難い刺激としては、紫外線や過度な摩擦、強洗浄力のシャンプーなどなどが上げられます。
ただし、通常の場合これらの刺激だけでCMCに多大な損傷を与えることはありません。
髪には、一時的に弱体化する条件がいくつもあります。ぬれる、熱を持つ、電荷を帯びる(静電気)などがあがりますが、これらと合わさった時初めてCMCの損傷が心配される訳です。
そこで、考えてみるとこれらの条件が揃う場所があります。
お風呂です。
お風呂のシャンプーは、全部の条件が揃っていますよね?
ヘアケアの舞台であるはずのお風呂こそが、髪にとっては同時にダメージの舞台であったと言える訳です。
髪の潤い(CMC)は補給出来るの?
失われたCMCは自然には回復することはありませんが、トリートメントやオイルなどのアイテムを使って補充してあげることはできます。一口にCMCといっても、その成分はさまざまですし、潤い(ハリ、コシ、ツヤ)を補うと言う意味では、方法はいろいろあります。
では、実際にどんな成分を含むものを選べばいいのでしょうか?
1、CMCの補充
CMCの主成分はセラミドです。失った成分を補充するならば、同じセラミドを補充してあげるのが一番ですよね?
ただし、重要なのは補充するセラミドの種類です。
意外かもしれませんが、じつは、セラミドは幅広い定義を持っていて、一口にセラミドといっても、さまざまな構造をもつものがあり、大変複雑です。ですから、単にセラミド配合!といっているアイテムなら何でも良いと言う訳ではありません。しっかり、どんなセラミドが配合されているかチェックするべきなのです。もちろんどんなセラミドでもそれなりの潤い補充効果は期待出来ますが、群を抜いて効果が高いセラミドがあります。
それは、ヒト型セラミドです。
ヒト型セラミドとは、人体に存在する数種類のセラミド達とまったく同じ構造を持った人工のセラミドの総称で、他のセラミドと比較にならない高い効果が得られます。
他のセラミドとは、ぞくに天然セラミドと呼ばれる成分達です。馬や植物から生成される成分ですが、これらの成分ではヒト型セラミドの持っている効果や成果を得る事は出来ません。
見分け方は、成分表示の記載で簡単にできます。には、セラミド1やセラミドEOPなどとセラミドと数字もしくはアルファベットで記載されていればヒト型セラミドです。わりと高価な商品に使用される傾向があり、配合されていれば注目です。
とくに、髪の潤い補充に特に注目されているのは、セラミドNG(セラミド2)です。セラミドNGは、髪に含まれるセラミドとまったく同じ構成をし成分ですから、極めて高い毛髪の補修効果が期待されています。
2、CMCの類似成分による潤い補充
ヒト型セラミド以外にも、CMCの類似成分、つまり、セラミドと似た構造を持っている成分によって潤いを補充する、というのも効果的です。
オレイン酸やパルミチン酸などが有名ですね。
これらの成分を多く含んだ油として、ツバキ油があがります。
ツバキ油の構成成分は時期や産地によってさまざまですが、例えば
オレイン酸 85%
パルミチン酸 10%
リノール酸 4%
ステアリン酸 2%
となっていて、CMCの代わりをになう、オレイン酸、パルミチン酸の含有量がたっぷりです。
ですから、ツバキ油は潤いの補給にぴったり!と言いたいところですが、、、、注意点があります。
成分表示でツバキ油とある場合、リノール酸やステアリン酸も少なからず含んでいる可能性があるといえる点です。単に、潤いの補給を狙う場合、この2種の成分はその他の成分と言え、考え方によっては不純物といえます。
何故ならばというと、例えば、リノール酸は、お肌の水分の蒸発を防いで柔軟な肌をつくる、シミを薄くする、お肌の生成を促進する、といった効果が期待できます。良い事ずくめに見えますが、その分、とても酸化しやすいという弱点を持っています。
潤いを補充したい!というからには、髪に残留させたい!といったもう1つの顔を併せ持っています。これに対して、リノール酸の『酸化しやすい(腐りやすい)』はとても相性が悪いです。その点、オレイン酸、パルミチン酸は非常に酸化しずらい性質をもっています。
ですから、単に潤いの補充を狙うのであるならば、『ツバキ油配合』よりも、『オレイン酸、パルミチン酸のみ配合』の方が、優秀な潤い補充成分を持っていると言えるのです。
ほしがりすぎると思わぬ落とし穴が潜んでいる。現在のオールインワン系化粧品に見られる大きな弱点の1つです。
では、どう見分ければ良いかというと、成分表示には、配合された成分を全部書かなくてはならないというルールがあります。
ですから、同じツバキ油配合アイテムでも、成分表示を見れば、余計な物が入っていないか推定する事が出来ます。
全成分表示に、『ツバキ油』とあれば、リノール酸やステアリン酸といった余計な成分を含んでいる可能性がある。『オレイン酸、パルミチン酸』とのみ書かれていれば、絶対に余計な物は入っていないと見分ける事ができるのです。
3、被膜成分による潤いの演出
被膜成分と呼ばれる成分も、ある意味潤いを与える成分と言えなくはないです。
なぜならば、被膜成分とは、
ダメージ補修の本当の目的は、結局その先にある『ハリ、コシ、ツヤ』だよね。
これさえ得られるならば、何も、本当にダメージを補充しなくたって良いんじゃない?
ただ、危険な成分には頼りたくないよね?
そういった考え方から生まれたのが被膜系の成分達だからです。
「シリコーン」などが有名ですね。
シリコーンは、髪をダメージごと被膜し、『ハリ、コシ、ツヤ』を演出します。
あくまで演出であって、ダメージを回復、つまり髪の保水力を復活させる訳ではありません。髪にドレスを着せるといったイメージです。
ダメージを補修しないで良いの?なんか体に悪そう。
などなど、悪い印象を持たれがちですが、心配はいりません。
髪のダメージは、私たちの体に直接の害がほとんどない事と、
シリコーンは非常に安定した状態変化(腐らない等)しずらい安全成分であることが言えるからです。
髪は死んだ細胞の塊であり、その役割は、頭皮を守る使い捨てのシールドとも言えますが、坊主頭でも問題ないようにその必要性は絶対的な物ではありません。髪ってほとんどの人とって、もはやアクセサリーとしての役割がほとんどですよね?
そういった意味で、シリコーンは潤いの演出家として非常に優秀です。酸化などの変化を受けづらく、ある意味、2で紹介したような、CMCの類似成分による潤い補充を狙って、その他のいらない成分を受けてしまう落とし穴を考えれば、シリコーンの方が、よっぽど安全で安定した仕上がりになるとも言えるからです。
ですが、ホントに被膜しているだけなので、次の洗浄などで剥がれてしまえば、ダメージ髪は見事によみがえり、最悪の仕上がりとなりますので被膜のやり直しが必要です。しかも、剥がれ方も均一であれば良いのですが、ムラが出ればゴワつきにつながりますし、パーマ後などは薬剤を閉じ込めてしまうと言った落とし穴も抱えています。簡単、安全だからといって、頼り切ってしまうと思わぬトラブルを生む可能性は無いとは言えません。使用するのであれば、シリコーンを毎回洗浄時にしっかりとOFFできる強めの洗浄成分が配合されているシャンプーを選ぶことが大切です。
また、本当の潤いを持った髪とはやはり質感は別物です。どちらが良いかは別として、被膜と補修が違うのは確かですから、邪道として、ノンシリコンと嫌われるのも分からないではないです。
このように、『髪の潤いを補う』とは、髪のCMCの領域においてだけあげてみても、
- CMCを補充する
- CMCの類似成分によって補充する
- 被膜して、潤いを演出する
とさまざまな種類と方法があるのです。CMC領域以外にも、髪の潤いを補充する成分はさまざまで非常に複雑です。例えば、髪の損傷したタンパク質と反応する事で、髪そのものの補充が期待出来るペリセアやヘマチン、熱によって髪の補修効果を発揮するメドウフォーム-δ-ラクトンなどなどがあります。
このように潤いの補充は多岐の種類にわたります。
今回紹介した3つの潤い補充の方法、どの方法を選ぶかに正解はありません。どの方法も効果的で、それぞれ注意点があるからです。
ですから、パッケージに髪の潤いを補充などと書いてあるだけで、単に潤いを与えるアイテムだ!とくくらずに、しっかり成分表示を見て、どんな方法で潤いを狙っているか?余計な成分ははいっていないか?効果的な成分を選んでいるか?といった見方が出来るようになれば、潤いのある髪は狙って、自分で作る事が出来ます。
髪の潤いを守るには、意識して刺激を避けること!
髪は頭皮から生まれた時が最高の状態で、後はただ傷んでいくだけです。
どんなに気をつけても、ノーダメージでいる事は不可能と言えます。
ですから、先述した潤いの補充や演出も有効です。
ただし、やはりあらゆるダメージの始まりはCMCの流出、不足により始まります。
ですから、CMCさえ守りきれば、ダメージは起こらず、潤いを補充する必要はないとも言えてしまうのです。
潤いのヘアケアの主役は、いかに質の良い髪を生むか。その髪をどう守っていくかです。ただでさえ、年齢を積めば積む程、毛髪内のCMCは減少する傾向にあるそうです。ですから、必要の無い刺激は避けて、髪を守る!が大切です。
そこで、一番の注目はダメージの主舞台『お風呂』です。
いかに低ダメージで、お風呂をのりきるか?がポイントです。
具体的には、
1、シャンプーやトリートメントなどのケアアイテムに何を選ぶか?
2、低ダメージに洗髪•タオル•ドライヤーを終えるコツ
が重要になります。
もはや、美容師さんの領域に入って来てしまったように思えますが、本物の美容師さん達も、シャンプーやブローはやっぱりプロだな、低ダメージをすごく意識して洗髪してくれているなーと感じた事はありませんか?そのくらい、洗髪のアイテム、方法はやはり重要なのです。