界面活性剤と聞いて、どんな印象を持ちますか?
化粧品や洗剤に入っている刺激物で体に害を与えるかもしれない化学薬品と印象を持つ方が多いかもしれません。実際、書籍をあさったり、ネットを調べると、刺激が高いことを根拠に、「皮膚がただれる」とか、「ハゲる」とか、「体内に浸透して出て行かない」とか…悪いことばかりが目立ちます。
コレだけ悪く書かれれば、
『界面活性剤入ってる!怖いっ!』
と単純に反応してしまうのもうなずけます。
しかし、これはかなりの誤解というか、一人歩きした言葉です。
界面活性剤はかなり広域の意味のある言葉で、洗浄剤や刺激物の総称ではありません。
界面活性剤は、シャンプーや洗剤の主要成分として使用され、その上で、肌荒れや刺激を引き起こす主犯格の成分として強く槍玉にあげられがちで、このような印象は界面活性剤を利用した洗浄剤から来たものかと思われます。
実際のところは、界面活性剤ばかりがトラブルの元ではなく、他の成分だったり、取り合わせなどに問題が合ったりするのですが、やはり自身の評判の悪さで、責任を取らされがちです。
今回はかわいそうな嫌われ者の界面活性剤とはどういう物なのか?界面活性剤とはについて説明したいと思います。
Contents
界面活性剤って何?害はあるの?
界面活性剤とは何か、化学のプロの方たちで言うのと、一般で言うのとで様々な正解があると思います。そのあたりが、界面活性剤が恐れられる原因の1つなのかもしれません。
プロは明確に定められたルールから外れることが出来ず、間違えられません。一概に言いづらいものはどうしても説明に苦しみます。でも一般消費者はある程度ふわっとした理解で構わないと思うのが実情です。
「ざっくり言ってどういうこと?」
ということが知りたいのですが、そのような説明はしてもらえません。
しかも消費者のための成分表示ときたら、超化学ですよね?誠実さは伝わりますが、正直、もうちょっとかみ砕いて説明してもらいたいものです。これを自分で解きほぐしつつ、内容をつかんでいくしか道はないのです。
ですから、今回は化学をかじった一般人である私が考える、一般に浸透すべき界面活性剤の真実とは、についてご説明させていただきます。
界面活性剤の一般的な定義
牛乳にも界面活性剤が含まれている、ということは知っていましたか?
牛乳は脂肪と水分が混ざりあってできているので、界面活性剤を含んでいると言えます。
つまり、界面活性剤は自然界にも存在するということです。
もちろん、人の手によって施されたもののみを界面活性剤とするのならば話は別ですが、少なくとも同じ働きをするものは自然界にもたくさん存在します。
界面活性剤とは呼んで字のごとく
『界面』を『活性』する『剤』
です。
いかに文字を分解しても、漢字を見る限り、やはりちょっと化学薬品っぽくて怖い印象を受けますね。
ですが、この条件を満たせば、界面活性剤である!と考えれば、正解だと私は考えます。
この条件、1つ1つをきちんと理解すれば、界面活性剤がいかに幅広い意味を持つかが分かってきます。
1つずつ見ていきましょう。
界面とは
界面は違うもの同士の間にある、境界面のことです。
コップに水を注げばコップと水の間、水と空気の間が界面になります。さらに、水面の真ん中に向かって油をたらせば、油は水に浮き、水と油の間、油と空気の間に新たな界面ができますね。
まわりを見渡せば、私たちの身の回りにはたくさんの界面が存在します。
活性とは
界面活性剤とは界面を活性化する材料です。
では、活性化とは具体的にはどんな作用を言うのでしょうか?
全ての界面活性剤を単純に『危険!怖いっ!』と思ってはいけない理由はここです。
界面活性剤の活性作用って?
界面活性剤の作用は、1つではありません。
ひとくちに界面活性剤と言ってもさまざまな効果が合ったり無かったりする訳です。ですから、界面活性剤は、あくまで界面に何らかの作用を発揮するものの総称と考えて良い訳です。例えるなら、界面活性剤?怖い!と言うのは、遊園地?怖い!と言うのに似て?ますw。そのくらい?幅広いです。
また、界面活性剤がその効果を発揮するため、お水のチカラを借りることや密接な関係にあることが多く、その効果もそのタイプによって、ある程度区別出来るため、お水に触れたときの反応から
アニオン界面活性剤
カチオン界面活性剤
両性界面活性剤
ノニオン界面活性剤
の4つに分けて考えられます。が、今回、ざっくり界面活性剤を知るのにこの辺は、変に深入りするべきではないと思うので、ここでは無視します。
界面活性剤が界面で起こす活性作用を1つずつ見ていきましょう。
1、混ざらないものどうしを、混ぜ合わす
水は油と混ざりません。ことわざにもありますね?ですから、コップの水に油をたらすと油は水面に円を描いて浮きます。コレは、水と油の界面が新たにできたとも言えます。
この界面を活性化することにより、水と油を混ぜ合わせるのがこの界面活性剤の働きです。
なぜこんなことが起きるのかというと、
例えば、ある界面活性剤は、水とくっつく部分(親水基)と油とくっつく部分(親油基)の二つでできています。
油の浮いた水入りのコップにこの界面活性剤をある程度入れてかき混ぜると、カップ内の界面という界面に界面活性剤が次々に入り込んでいきます。水と油の界面、水とコップの界面、水と空気、油と、、、といった具合です。
このときの水と油に注目してみましょう。
界面活性剤は、水に向かって親水基を、油に向かって親油基を向けて、油を上下左右あらゆる方向から包み込みます。包み込む理由はこちら
界面活性剤に取り囲まれた油は、かき混ぜればかき混ぜるほど、更に細かく分断されて、どんどん小さくなって数を増やしていくイメージです。
こうして、細かくつつみこまれた油は、水中に広く分散していきます。私たちはこの状態をみて、『水と油が混ざった』と認識する訳です。
包み込まれた油の粒子、一粒一粒が目に見えないほど小さければ、見た目は透明な液体になります。ですが、多くの場合、目に見える程度の大きさに留まるため、白く濁った状態になります。この見た目から、界面活性剤が水と油を混ぜ合わせる力を、乳化作用とも呼んでいます。
シャンプーによる洗浄は、この乳化作用を利用したものが基本となっているものが多いです。シャワーから出た『お湯(水)』と、髪や頭皮にこびり付いている『皮脂(油)』との界面に作用して、混ぜ合わせて、排水溝に向かっていっしょに洗い流すという訳ですね。
2、水の表面張力を弱める
表面張力とは、水同士が、空気に対してくっついて集まろうとする力です。これにより、水の集まりは、空気に触れる部分を極力小さくしようと結束します。
例えば、水滴二つが接触すると、1つの水滴になります。決して2つの水滴のまま接触し続けることはできないのです。
アメンボが水面に浮いていられるのも、この力を利用したものです。
水面のアメンボの足は、自らの体重によって、水面から少し沈んでいます。水にとってみると、足が水面に沈んだ分、表面積が大きくなりますよね?その面積を小さくしようと水たちが、アメンボの足を水面へ押し返そうとする力が発生します。それこそが、水面張力です。この力がアメンボの体重を上回るからこそスイスイ浮いていられるわけです。
ある、親水基をもつ界面活性剤は、水と空気の界面に作用して、水同士のつながろうとする力に介入し、表面張力を弱めます。つまり、この界面活性剤を、机の上の水滴にたらせば、半球だった水滴は平に広がります。水の表面張力が弱まり、水同志の結束が弱くなったためです。
池にこの界面活性剤を垂らせば、アメンボを押し上げる水たちの力は小さくなり、アメンボはまさかの沈没を経験することとなります。※絶対にやってはいけません。
さらに、この力は泡立ちにも関係しています。水を激しくかき混ぜると、一瞬、空気が水溶液の中に入って、水の中に気泡ができます。
水中に空気と水の界面ができたとも言えますね。
この手の界面活性剤を入れた状態で、水をかき混ぜると、空気と水の界面に活性剤が入り込み、水に親水基が作用することで、表面張力が弱まり気泡の表面が安定します。コレによって水溶液に泡が立ちます。この状態で、気泡が水溶液から離れれば、シャボン玉として飛んでいくわけです。シャボン玉は、表面積が究極に広がった水溶液とも言えるので、水面張力を相当弱めた結果とも言えますよね。
かなり化学の話になってしまいましたが、ここでシャンプーの話に戻します。
シャンプーは泡立つほど洗浄力が向上する傾向にある(良く泡立つシャンプー=洗浄力が高いではありません)ので、泡立ちはシャンプーにとって大切な要素になってきます。いくら洗浄力のあるシャンプーでも泡立てて使用しなければ、洗浄力は低いということです。
このようにとにかく界面に作用するものの総称が界面活性剤というのが一般には正しい知識と考えて大丈夫です。そう考えると、一般の界面活性剤は、洗浄という殺伐とした簡単なイメージが先行してしまっていて、曖昧なまま恐れられている実情が明らかですよね。
シャンプーの界面活性剤そのものが持つ刺激は実際にありますが、世間における刺激の正体は、イメージでしかありません。
界面活性剤の効果はほとんど浸透していないといえます。
界面活性剤は危険、という幻想
一般的にみると、界面活性剤の代表的な作用は2つ。
水と油を混ぜ合わせる、水の表面張力を下げることと言えると思います。
例をあげてみると
水と油と界面活性剤のコラボレーションは身の回りにたくさんあります。
牛乳は脂肪が水に混ざった状態で安定してます。
マヨネーズは水と油を混ぜたものです。
人間の体だってヨクヨク想像してみたら不思議です。人体の60%は水分でも油と一緒に構成されていますよね?お肌の潤いだって、水と油が絶妙の関係を維持しているから保てるものなのです。
もう1つの機能『表面張力を下げる』も見てみましょう、表面張力を下げるとどういった効果が得られるかというと、
水滴を平に伸ばすことができるようになります。
コレは、水粒子が個々に分かれ細かくなる
伸ばした相手に張り付いて、その状態を維持しやすくなる
と言い換えることができます。
つまり界面活性剤は浸透力や潤いを与える手助けもしてくれるんです。
浸透力がUPすれば、価値の上がる商品や効率の上がる工業がたくさんあります。
化粧品は、肌になるべく広く長時間効果を発揮してほしいです。
農薬だって、植物に噴出してすぐ滴り落ちてしまっては困ります。
衣類などの染色を助けることにも役立ちます。
こうして見ると、界面活性剤は、本当に便利で、ありとあらゆる業界で様々な目的のために配合されています。
食品、化粧品、洗剤、医療品、農業、塗料、建築…などなどです。
もっとも意外そうな界面活性剤の使用方法はやはりスイーツでしょうか?
食品では主に舌触りや食感をよくするために界面活性剤が活用されています。普段口にしている、アイスクリームやチョコレート、パンやケーキ、ドレッシングにも界面活性剤は使われています。スイーツのふわっとしたクリーミーな至福感は、界面活性剤による演出です。
農薬にも、ケーキにも大きい意味では同じ目的で入っている・・・と考えるとたしかにちょっと気持ち悪いかもしれません、その辺の万能性が逆に界面活性剤の危険なイメージを植えつけてしまっているのかもしれませんね。
界面活性剤の刺激の正体とは?
界面活性剤の恐怖は、ほとんどがそのイメージから生まれていて、実際はそれほどおそれるべきではありません。
一方で、界面活性剤には確かに刺激と呼べる作用があります。
それは、まさに界面を活性させる剤であるが故に生まれるものと呼べます。
人体の皮膚は、タンパク質という言わば『油』と『水分』による本来混じり合う事の無い2つの成分による神秘的ともいえる構成で成り立っていて、それによって体内を守っています。この神秘的な構造をラメラ構造といい、油系の刺激は水の層で、水系の刺激は油の層でシャットアウトしている訳ですが、親水基、新油基、両方をもつ一部の界面活性剤はこのラメラ構造へ特別な介入をしてしまう可能性がある。と言う訳です。『破壊する』なんて事は、まず無いはずです。が、破壊する事はなくとも、そのチカラを持ち合わせていることは確かです。
少なくとも、洗浄剤である「シャンプー」には、このチカラがあります。
が、かなり小さいです。
シャンプーという枠組みの中で見た時に、高刺激と言われるラウレス硫酸Naであっても、そのシンプルさ故に、簡単に最強の刺激をもつとも言える石けんシャンプーであっても、問題を起こしたなんてこと巷ではほとんどきかないですよね?もちろん、そんなチカラ小さいにこしたことは無いので、低刺激低洗浄力のシャンプーを推してる訳ですが、、、
何れにしても、そんな小さな刺激のために、界面活性剤全体がイメージダウンする事は不憫ですよね?
シャンプーの刺激の話をするのであれば、界面活性剤はというより、シャンプーの洗浄成分は、小さいなりに皮膚への刺激があり、その大きさは洗浄成分の種類によって変わってくると言うのが正しいです。
ですから、界面活性剤を危険として、おそれると言った風潮は、界面活性剤という途方も無く大きな世界で見ても、シャンプーという狭い世界においても無責任な風潮と言えます。
正しい知識と判断力を自ら備え、巷にあふれる怪しげな情報に振り回されることなく、自分にあった商品を賢く選んでいける姿勢を磨いていきましょう。